まんまる満月、サンマの夜は更けて

まるまると太いとは言えないながらも、ほどほどの新鮮なサンマが、檜原村に届いていた。けれど、こっちの檜原村に行くのがちょっとハプニング。東京駅に行ったら中央線が吉祥寺の人身事故で不通になっていた。これは大変。急きょ山手線を半周して高田馬場から西武線で拝島に向かう。緊急事態だったが、予定よりは少し早く大先輩のGさんと合流して武蔵五日市駅に着く。途中までの払沢の滝止まりのバスがいたので乗る事にした。後からのバスだと、目指すかみさんの実家の前に着くが、払沢の滝から30分ほどかけ歩いて行く事にした。今朝までの大荒れの天気からもう、太陽が覗かせ大半が青空に変わっている。台風一過で、そこらが洗われたように奇麗で緑が輝いている。空気も上手いぞ、さすがは檜原村だ。Gさんと秋田の山を歩き回った事を思い出して来てわくわくしてくる。
一汗かいて到着すると、昨日から来ていたかみさんが、冷えたビールとなすの漬け物を出して来て乾杯。田舎道の散歩で、この一口目のビールは最高だ。


↑なにものにもかえがたい、一杯目のビールの旨さよ。

↑お品書きも用意して、意気込みだけはあるのだが

↑サンマ3品、一皿盛り。お刺身には、サンマの肝とかんずり(新潟の発酵したゆず辛し)を包丁でたたいて醤油に溶かして付ける。生姜より、こくと旨味たっぷりだ。

↑骨は軽く塩をして干して焼けば、いいおつまみになる。おろしたこの骨と残った身を見てGさんに腕を上げたねと言われ、ちょっと嬉しかった。

ゆっくりしていられない、8本のサンマをばっさばっさと三枚におろし、サンマ3種用に腹骨を取り、皮を剥く。お刺身、片栗粉をはたいて湯引きの梅肉のせ、そして、酢味噌のネギのぬたが、定番コース。見られていると恐縮してしまうくらいGさんは、料理名人。それではとおもむろに野菜サラダ(アスパラ、舞茸、人参、紫タマネギのマヨネーズ和え)、地元檜原椎茸が大量に用意されていたので、椎茸+エレンギ+人参のゴマ炒めなど、野菜系サイドメニューを手早く作った。

↑とりあえず、こんだけあれば酒が飲める。さて、宴の始まりだ。
期待がたかまる酒どころ秋田県出身のGさん持参の日本酒は、意外や紙パックの月桂冠純米だった。「紙パックは飲んでしまえば、細く切って焚き火の焚き付けになる。一升瓶は、山では無用のもの」なるほど、理にかなっているし何よりこの酒、冷やで旨い。ごくごく普通の味で、すいすい進む。
さて、メインのサンマを炭で焼く頃には、東の空には十五夜お月様がぽっかり浮かび上がった。山の稜線から、するすると天に駆け上るような感じで。

↑月が昇り、炭火もいい具合。今夜のメイン登場で、酒宴も最高潮へ。

翌朝は、リックに竿と毛針を忍ばせていたGさんにお付き合いして、すぐしたの河原に行った。魚の機嫌がよろしくないのか、毛針の疑似餌釣りだから難しいのだろうが、ヤマメの姿は見る事ができなかった。Gさんに教えてもらった釣船草(つりふねそう)岸辺にいっぱい咲いていた。ちょっと変なかたちがカワユクて雑草のように沢山無造作に咲いているが、高山植物だそうで、こんなところにと驚くばかりで、檜原やるなぁ。

↑朝の河原は、朝日に照らされ気持ちがよい。清い流れが、身体の中まで流れ込んで来るみたいだ。

↑この紫釣船と黄釣船の2種類があるそうだ。

朝飯は、まだまだサンマで、今度は酔っぱらっていないので目を離さずに集中して完璧に焼き上げた。遠火の強火で、遠赤外線効果抜群、サンマの中からぐつぐつと脂が吹き出しそれが炭に落ちて煙を上げ、薫製効果でますます上手そうになって行く。酒でもいいが、新米とみそ汁、大根おろしたっぷりのさんま塩焼きにかなうものはそうあるまいて。

↑この色だけでも上手そうだが、匂いと音が加わって、お腹がグーだ。

↑もう、なにもいらないでしよう。これだけあれば。

↑いい散歩日和。のんびり、ゆっくりでいい気分。

食事の後の散歩タイム、少し奥の神戸岩まで行く事にした。コウベではなく『かのと』と読みます。小さい集落、マス釣り場にバンガロー、かなりの人が土日の泊まりがけで遊びに来ている。手軽な自然満喫に来ているようで、大鍋洗ってるのは、定番のカレーの後だろうか。

↑素材がいいと、焼くだけでごちそうとはよく言ったものだ。

↑薪の火で、焼き上げる焼きそばなんて、何となくいつもの焼きそばより高級感が・・・

↑ゆるりゆるりと昼酒だが、透明な味の旨いこんにゃくのつまみで変な酔い方はしないものだ。
そうだ、こちらも予定していた焼きそばのノルマがあった。
ストーブに鉄板、薪の火で焼く贅沢な焼きそばだぞ! Gさんの手際が光る。その後、檜原父母の手作りこんにゃくをつまみ、昼酒しながらいい気分でひなたぼっこしていた。Gさん「なんで、君はここに住まないんだい」と、ぽろりと言われたのが、なんだか妙に心に引っ掛かった。