やっぱりね『カブト』で、なくちゃ

movie_kid+blues2010-09-11


新宿・思い出横丁、連チャンである。
お休みの土曜日は、昼頃の映画を観ていい気分で(つまらんのを観てしまったとガックリしてる事もあるが)酒と旨いもの食べたくなる。新宿・思い出横町の『カブト』なら2時からやっていて、だいたい、4時までにいくようにしている。しっかり昼酒なのだが、土曜日なんだからいいでしょとばかりに自然と足が向いてしまう。
早い時間からいくのは、早く飲みたいだけではなく、先着順で、レバと言うものが出てくるからだ。キモ焼きはもちろんあるが、うなぎのレバーだけを串に刺して食べさせてくれるのだ。キモ焼きのような苦みはなく、その上品な旨味だけが、口の中に広がる。皆、それが食べたいがために早くからこの店に来るのだ。うなぎのレバーなんてひどく小さく、ひと串に4、5匹のうなぎがいるのでそう数を用意できるものではない、すぐに売り切れ御免って訳だ。
案の定、今日は買い物していたので4時すぎてここに来たら早くもレバは売り切れになっていた。
うなぎの頭からしっぽまで、全部食べさせてくれるのが売りのうなぎの串焼き屋で、7本がワンセットのコースになっている。思い出横丁のちょうど真ん中、戦後のこの地の雰囲気をまんま残っている、昭和そのものって感じ。


↑最初は、えり焼きから。上お新香は、間を埋める心強い見方。串2本でお箸に。


↑固エリは、骨問題で途端に食べる速度が落ちる。

ひれ、えり、れば、きも、かば、5種類の部位で構成されている。ただ、えりにはかたえりというのもある。うなぎの頭の首の部分で小骨、大骨がカタマっているところで普通は圧力鍋で骨が柔らかくなるまで蒸したものを焼いている。本当は、生の身を炭火でじっくり焼き上げた方が断然旨い。歯に問題がない時は、がしがし噛んで骨も全部飲み込んでいたが、歯ががたついて来た今はティッシュ片手に骨を出し出しなんとか食べている。勇気を持って「かたえりで」と頼もう。
そして、大事なのはお通しで出されるお新香はほんのちょっぴりなので、上お新香も最初に頼もう。今はまだ、春に漬けたラッキョが入っていて、なんとも嬉しい。うなぎの串焼きを頬張りながらキャベツ、キュウリのしゃりしゃり口直しがたまりません。ビールがぐいぐい喉に吸い込まれて行く。さて、ここの串焼きにあうのは、何たって焼酎で、昨夜の『ささもと』同様、金宮焼酎に梅のエキスをたらしたものがみんなのお気に入りだが、うなぎの場合、より芋焼酎の方があうと思うので無月という芋焼酎をいつも飲んでいる。もちろん、お一人焼酎3杯までは鉄の掟。


↑普通の蒲焼きは、短冊で。

戦中、戦前生まれの人達が集うお店も今は、そうないだろう。それくらい全体の年齢層が高く、焼き台でうなぎを焼く店主のGさんからして70代半ばなのだから、凄いのだ。うなぎパワーかどうかわからないがとにかく元気で、気合いでお店を続けている。暑かった今年の夏、ここカブトは焼き台の炭火と東京・新宿大都市の真ん中で本当に暑かったが、座っている客より中に入って立って働いている店の人間はもちろんそれ以上だ。時々、横丁を横切る様に線路の方から風が抜けて行くとほっとするが、なかなか夏場の日中そうは吹いてくれない。
おじさんと言うより、おじいさんの方がぴったりするくらいのご高齢の人もどんどん来て、うなぎを頬張り、焼酎をぐいぐいやっている。何とも居心地が良い。
「ほい、差し入れ。熱中症にならないでね」
と、ポカリスエットのペットボトル何本かお店に差し出すお客さん。その心遣いにぐっと来る。
パソコンの日記を付ける事になったので、写真を撮らせてとことわり、焼き上がるうなぎを撮っていたら、横のお客さんに「お兄さんも入れて撮ってあげようか」気さくに声をかけられ「僕よりも食べるものの方が、みんな興味あるようですから」と。
さて、7本のコースも終わったので追加を頼もう。うなぎは、塩焼きもまた美味しいのだ。コースにもある「えり」の開いていないそのままの形、うなぎの頭の先を落とし首のところ(うなぎに首があるかどうかわからないが)ぶつ切りにしたもので、かたち通り「マル」といっている。タレでもいいが、この塩焼きが滅法旨いのだ。外が香ばしく、カリカリに焼け、中が蒸されてほっこりふわふわジューシーな身がつまっている。骨もあるが、そんな事はおかまいなしにその味を堪能、至福なのだ。


↑追加のマル塩は、絶対外せませんって。
「ごちそうさま」と、外に出て横丁から出るとそこはまぎれもなく大都会・新宿の人で溢れている街並。残暑の熱気と昼酒の酔いにくらっとしながらも、居心地のいい場所にいたからか、そんなオアシスを知っているからか、心にちょっとした安らぎを感じながら家路についた。