新宿・思い出横町『ささもと』に抱かれて

movie_kid+blues2010-09-10

ブログの初回は、心の底から大好きな『おおはし』だな、と、決めてたんだが、金曜日仕事が終わらない。このご時世、ひとりで仕事するのに行き詰まり、デザイン事務所というところに務め始めてかれこれ1年以上経ったのだけれど、これがつらい。自分の実力のないところを目の当たりにして、凹みながら朝から晩までパソコンの前に縛り付けられている。
そんな月曜日から金曜日までひーひー言っていたら、金曜の夜は、やっぱ、飲みに行きたいよね。自宅の荒川区を通り越して、北千住の『おおはし』に飛んでも行きたい気分になりながら、限度8時をさっき超えてしまった。せめて、9時に店内に入っていないとその幸せを味わえないもの。
千代田区麹町の事務所を、ようやく9時を過ぎて出る事が出来た。四谷駅で、東京ミットタウン、六本木ヒルズの夜景が、ちらちら、瞬いている。そうなんだ、金曜日だ。早足に、地下鉄で新宿に向かった。
新宿西口の思い出横町。うなぎの串焼き専門『カブト』は、すでにこの時間は終わっているので、行くのは『ささもと』だ。『カブト』もそうだが、数少ない飲み友達のKさんに教えてもらった。『ささもと』は、行き始めてまだ2年ぐらいだろうか。遅くまでやっていて、旨いもの出す店は少ないが、ここの焼きトンは旨い。豚のもつ焼きは、下手なところで食べると匂いもキツくて固くて、パサついていて、もう、考えるだけでうんざりしてくる。
のれんや看板さえ出してないこの店は、一列のカウンターだけで、奥に4人席がひとつ、中程のカウンターに座る時は、座っている皆さんに一声かけて「通ります」と言わないと通れない狭さ。表に面したところに焼き台と煮込み鍋がぐつぐついっている。その通りに飛び出す形で、人が座れる様にもしているが、どうつめても15人が限界だろう。早い時間に来てもなかなか入れないわけだが、9時を過ぎて遅くなってくるとなんとか入れるので、お世話になっているのだ。
金曜日なら(二代目?)店主のおやじさんが、焼いているので、入り口のほうに座りたい。はっきりいって、変なおやじさんで、変なやり取りになる。偏屈でも、こわいと言うのでもなく、ぶつぶつとあまのじゃくって感じの物言いをしてる。結構、面白くてひとり飲みにはいい相手になったりする。
「焼酎」とまず聞いてくるので「いえ、これからなんでビールください。煮込みも」
ここのルールは、煮込みから始めるのが基本らしい。たっぷりの煮汁をすすりながら食べるのもルールの一つ。そうでないと、この後この皿のみで焼いたものも食べないといけないのだ。煮込みの部位はシロが基本だが、フワ(肺臓)も時には入り、今日はとろとろになった筋を入れてくれた。コラーゲンたっぷりだ。


↑汁だくの串煮込み。意外にみんな汁すすらないのね、健康志向?

変な店主が編み出したのか先代譲りなのかは知らないが、ここの焼き方が独特。もちろん豚モツが売りなのだけれど、野菜も旨くてしめのキャベツもそうだが、トマト、小タマネギ、椎茸、エレンギなど野菜そのものと茗荷、アスパラ、エノキ、ゴウヤなどの肉巻き、ことごとく煮込みの鍋にぶち込む。火の通りの早いものはすぐに、遅いものはじっくりと煮込みの鍋の中で火を通し、それから火であぶり香ばしくしくするのだ。だから、肉巻の中の野菜の火の通りが抜群で凄く旨い、絶品。


↑目の前にこれがあると、名前を言えなくても指止しでいけそうだが・・・


↑タンもコブクロも、あっ、と驚く

おやじが連発する「変な焼き方でいい」と、いうのは、その煮込み鍋で火を通す技法にさらに味付けにかぼす汁で酸味をプラスして粒こしょうをカリカリ挽いたのもかけ風味もプラス。この方法でタンを焼いてもらったら半生のような、でも、ちゃんと火が通り、その柔らかさと言ったらタンとは思えない食感で驚いてしまった。何と、塩もふっていなくてかぼす汁の中に含まれるかすかな塩分がしっかり下ささえしているのだ。唸りました。
レバーとか、ホーデン(玉)は、ねぎ醤油がおすすめだね。もう、たっぷりごっそり刻みネギをかけてくれる。さっぱりと、ボリームたっぷりに食べられる。
この野菜の扱いが、よろしいのでどちらかと言えば肉より魚系好きな酒飲みにとっても『ささもと』ならたまには、肉でいいかなと思う秘訣なのだと思う。


↑太いアスパラも、しつかり火が通りおまけに味もプラスされ。

↑レバ、ホーデンは、なんだかわからんネギだらけ。


もうビールから金宮焼酎に変えて3杯目になってしまった。お一人焼酎3杯は、ここのというか思い出横町のというか、最大のルール。だから、早くキャベツを煮込み鍋に入れてもらわないと、酒が無くなって食べる情けない状態に陥ってしまう。肉のあらゆる部位のことごとく、野菜の青、赤、白、茶のことごとくの旨味がぜ〜んぶ溶け出した味噌味の煮汁にくたくたになったキャベツがうまい事、旨い事。そして、最後にサービスのスープと言えば、一枚っきりの自分のお皿にその煮汁とネギをぱらっと散らしてくれる。同じ味は、どうもと思うと、おやじさんに「変なので」と言うと、かぼす汁を振りかけ酸味をプラスでまた違った味を楽しめるのだった。あぁ、いい気分。


↑極めつけのくたくたキャベツ。浅いの、よく煮たの、好みも聞いてくれる。

この後、はしごで同じ思い出横町の外れ地下の『バー・みのる』にいったけれど、もう遅いのでここの話は、また、今度。